個人事業主とマイクロ法人の二刀流はお得ということはわかったんだけど、法人一本と比較するとどうなの?
個人事業主とマイクロ法人の二刀流は「社保の最適化」ができ、個人事業主だけで事業するより保険料がかなりお得になります。
ここで気になるのは「法人一本の場合はどうなんだろう?」ということ。個人事業主から法人になる法人成り(なり)と言う言葉もあるくらい、法人だけで事業を行うこともメリットがありそうです。私も会社から独立する時に「二刀流」と「法人一本」の比較をしました。
結論を先に言うと私は二刀流を選びました。法人一本だけにするメリットがあまりないと感じたからです。
この記事では私が実際に行った個人事業主とマイクロ法人の二刀流と法人一本だけにする場合の比較をしていきたいと思います。
- 法人の税金メリットってなに?
- 法人一本でやる場合の税金・保険料の考え方の注意点
- 役員報酬をいくらにするといいのか?
- 個人事業主とマイクロ法人の二刀流と比較してどちらがお得なのか?
では始めましょう♪
個人事業主とマイクロ法人の二刀流と法人一本はどっちがお得?
マイクロ法人と個人事業主の二刀流のメリットおさらい
個人事業主とマイクロ法人の二刀流は社保の最適化できてお得!ということはこちらの記事で詳しく解説しています。
マイクロ法人を作ることで、個人事業の売上ではなく、マイクロ法人の給料に対して社会保険料が算出されることになります。給料は月数万円程度と少ないので最安レベルで社会保険に加入でき、個人事業主だけの場合と比較して数十万円単位で保険料が安くなります。社保の扶養も使えたり手当も増えるというメリットも。
法人で事業を行うことのメリットは?
二刀流の場合は本業は個人事業で行いますが、法人1本の場合は本業も法人で行います。法人にすることでどんなメリットがあるのかまずは確認してきましょう。
1. 法人税率が個人の所得税より低くなることがある
個人は所得金額に応じて所得税を払うように、法人も法人税を支払います。下の表で税率の違いをみてみましょう。
【法人税率】
【個人所得税率】
法人税率は所得が800万円以下であれば15%、800万円を超える部分は23.2%
一方個人の所得税率は所得に応じて5%~45%
単純に税率だけ比較すると、個人の所得税率が20%以上の方は法人のほうが税金の負担が少なくなることがわかります。
2. 消費税の免税期間
売上が一千万円を超えると個人事業主でも消費税の納税義務が発生しますが、2年前の売上高が基準になるので2年間は納税が免除されます。その後法人になるとさらに2年間免税になるので合計4年間の免税期間が得られます。よく「売上一千万円超えたら法人成りするタイミング」というのはここからきています。
ただし2023年にはインボイス制度がはじまることもあり、今からでも売上金額に関わらず消費税は支払う必要があると考えておいた方がいいでしょう。
3. 社会的信用
法人のほうが社会的信用が高いなどのメリットもあります。従業員を雇用するなら雇用主が個人か法人かは就職する際の選択に影響が出そうです。ただし一人で事業をするだけ、人を雇う予定もなければこの信用問題については考えなくていもいいです。
それぞれの税率をシミュレーションしてみる
さて「法人税率が個人の所得税率よりお得になることがある」ということが法人にする大きなメリットであるとわかりました。
そこで個人事業主とマイクロ法人の二刀流の場合と法人一本の場合の税率を考えてみます。二刀流では個人事業主で本業を行うのでここでかかる所得税率がどのくらいになるのか試算してみます。
前提条件の確認
独立前の私の状況です。これを前提に解説していきます。
- 会社から独立する
- 独立後の年間売上は1,000万円程度
- 法人一本か、個人事業主とマイクロ法人の二刀流か迷っている
二刀流の場合の個人事業主の所得税率は何%?
まず、二刀流の場合の個人事業主の課税所得はこちら
経費・家事按分などはざっくりで、マイクロ法人で最低金額で社保を最適化する前提です。この所得金額を先ほどの所得税率の表と照らし合わせると所得税率は20%になります。
法人一本の場合、法人税率は何%?
法人の所得金額(益金-損金)を算出すればいいのですが、売上一千万円と仮定すると経費もろもろ考えて800万円以下になるのは間違いありません。なので法人税率は15%。
結果
- 二刀流の場合の個人事業主の所得税率:20%
- 法人一本の法人税率:15%
税率だけ考えると法人一本にするメリットがありそうです。
役員報酬をいくらにするか問題
法人の方が税率が低いなら法人一本でやればいいんじゃない?
個人事業主は売上は個人のものなので個人で自由に使えますが法人の場合はそうもいきません。たとえマイクロ法人(一人法人)でも法人の利益を個人で勝手に使うことはできないので自分が使う分は「役員報酬」という形で給料として出す必要があります。
二刀流では役員報酬は月45,000円程度に設定しますが、これは個人で本業をしているからです。法人一本の場合は月45,000円というわけにはいきません。生活ができるレベルに役員報酬を出さなくては使えるお金がないと言う事態になります。私の場合、普段の自分の生活費を考えても年間400万円以上は役員報酬を出したいと考えました。
こちらのサイトも使いながら法人と個人の総額の税負担を計算していきます。
ケース1:【法人一本】役員報酬400万円、利益100万円
社会保険料(会社・個人)と税金(個人):約131万円(462万円 – 331万円)
法人税等:約30万円
個人と法人の総額税負担:合計約161万円
法人税等の計算はこちらのシミュレーションを使わせていただきました。法人税は15%でも法人住民税等他の税金もかかることがわかります。
ケース2:【法人一本】役員報酬500万円、利益0
社会保険料(会社・個人)と税金(個人):約162万円(575万円 – 413万円)
法人税:約7万円(最低法人税)
個人と法人の総額税負担:合計約169万円
ここから分かる通り、個人にお金を残そうと役員報酬を高くすると社会保険料や税金が高くなってしまいます。税負担を考えると、法人一本の場合は役員報酬を自分が生活できる最低限にしておくのが良さそうということがわかります。
ケース3:【二刀流】役員報酬55万円、利益0
前提
・個人事業主の課税所得が540万円程度
・マイクロ法人では売上80万円程度で利益はほぼ0にして、役員報酬は45,000円にする
個人と法人の総額税負担:合計約153万円
二刀流の場合は、個人事業主側の税金、個人と法人の負担の社保、法人税の合計を算出しました。
ケース1の法人一本の場合と比較すると約8万円の安くなりました。かなりざっくり計算ですが、役員報酬400万円程度だと法人一本よりも二刀流の方が税負担は少なさそうということがわかりました。
ちなみに役員報酬をさらに少なくしたり、個人事業主の経費や控除額によってどちらが税金・保険料負担が少ないかは変わります。ここに載せていない様々なパターンで試してみましたが、私の場合はケースバイケース、法人一本の方がお得になるシミュレーションもありました。
私が法人一本にしなかった理由
さて、ここまでの検証で法人一本のメリットがいくつか見えてきましたが、それでも私は法人一本にせず個人事業主とマイクロ法人の二刀流を選びました。
法人の方が税率は低く、役員報酬の金額を最低限にすれば法人一本でも節税メリットはある。ただ、思ったほど大きな差が出なかったのと役員報酬を切り詰めると自分が個人として自由に使えるお金が少なくなるのがネックと考えました。
つまり法人にお金を残すか、個人にお金を残すかという問題を重視しました。
事業を拡大して法人を大きくしたい場合や設備投資にお金がかかるようなビジネスなら法人に利益を残すのはいいと思いますが、私の場合はIT関係の仕事を一人でするだけです。法人に利益を残しておいて401Kで資産運用もできますが、それなら個人の蓄財や投資資金に充てるほうがお金の管理がしやすいと思いました。
- 二刀流と比較して節税メリットがそこまでなかったから
- 法人で人を雇ったり外注する予定もないから
- 利益は個人資産として管理する方がわかりやすいから
こんな理由で私は法人一本ではなく個人事業主とマイクロ法人の二刀流に決めました。いずれ考え方が変わった時には法人一本にいつでもできるので、まずはイメージしやすい方から始めてみようという感じです。
まとめ
法人一本と個人事業主とマイクロ法人の二刀流の比較をしてみました。私は二刀流に決めましたがみなさんはどう感じましたか?この疑問、私が独立するタイミングですごく悩んだことですが、ネット記事をみても解決できなかったので自分で行った計算・シミュレーションをまとめてみました。
法人一本とマイクロ法人と個人事業主の二刀流の比較、ポイントは
- 法人税と所得税の税率の違い
- 役員報酬をいくらにするか
- 事業目的で法人と個人どちらにお金を残す方がいいのか
このあたりをよく考えてみると答えが導き出せるはずです。自分にあった形で法人を作って活用していきましょう。
マイクロ法人を作る場合は知識がなくても外注せずに一人で作れます。こちらの記事で詳しく解説しているので参考にしてみてください。
以上、お読みいただきありがとうございました!
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