マイクロ法人の役員報酬・売上目標の決め方【いくらなら無税!?】

マイクロ法人の役員報酬・売上目標の決め方【赤字になってもいい?】 マイクロ法人

個人事業主とマイクロ法人の二刀流を始めたい!役員報酬や売上をいくらにすれば一番お得なの?

マイクロ法人の説明で「売上80万円・役員報酬45,000円」という例が出ますよね。なぜその金額なのか、それより高い(低い)と問題なのか。そもそも80万円も売上が上がらず赤字だったらどうしよう…など不安が積もりますよね。

私も二刀流で事業をしていて、最初は同じように不安だらけでしたが、税理士に確認し実際に役員報酬の設定・振込みや社会保険料の支払いも問題なくできるようになりました。

そこで今回はマイクロ法人の役員報酬の決め方、役員報酬に合わせた売上目標の決め方を徹底解説します。

この記事を読んでわかること
  • 役員報酬をいくらに設定すれば非課税になる?
  • 役員報酬を決める時、変える時、なにか手続きが必要なの?
  • 売上をいくらにすれば一番お得なの?
  • 売上見通しが立たない…赤字になっても問題ない?

では始めましょう♪

マイクロ法人の役員報酬・売上目標の決め方

役員報酬の決め方

マイクロ法人の目的は「社保の最適化」です。改めてマイクロ法人の仕組みを確認しておきましょう。

  • 個人事業主で本業を行う
  • マイクロ法人では副業を行う
  • マイクロ法人で最安等級で社保に加入して、高額な国民健康保険料を支払わない

*個人事業主とマイクロ法人の二刀流についてはこの記事で詳しく解説しているので、仕組みがよくわからない方はこの記事から読んでみてくださいね

【経験者が徹底解説】個人事業主とマイクロ法人の二刀流
個人事業主とマイクロ法人の二刀流とは?どんなメリットがありどんな人が対象になるの?実際に二刀流で事業している筆者が初心者でもわかりやすく解説します!

この前提をもとに、役員報酬をどうやって決めればいいか見ていきましょう。

「無税」の役員報酬を設定する

役員報酬は「会社役員の給料」なのでサラリーマンの給料と税金の扱いは同じです。会社員の給料は社会保険料や所得税・住民税が天引きされたものが振り込まれますよね。

マイクロ法人でも社会保険に加入するので、普通の会社員のように社会保険料は給料から天引きされます。(自分の会社なので個人と会社負担分の社会保険料を支払っていることになります)

会社員と同じということは役員報酬に対しても所得税・住民税がかかります。ただ、金額によっては税金がかからない「無税」になるラインがあります。

二刀流は個人事業側で本業収入があり、役員報酬が少なくても生活に困らないので、マイクロ法人の役員報酬は税金がかからない金額に抑えておくといいわけです。

では「無税」になる役員報酬がいくらなのかみていきましょう。

所得税

まずは所得税です。人によって使える控除は異なりますが基礎控除・給与所得控除はすべての人が使える控除です。

基礎控除 48万円
給与所得控除 55万円
合計 103万円

年間103万円以内の課税所得であれば所得税がかからないことになります。

住民税

住民税はお住まいの市区町村により基礎控除が変わりますが、東京都の例だと

基礎控除 43万円(東京都)
給与所得控除 55万円
合計 98万円

年間98万円以内の課税所得であれば住民税がかからないことになります。

給与所得が発生するデメリット

役員報酬単体で見た時に所得税・住民税がかからないのは上にあげた103万円や98万円ですが、個人事業主とマイクロ法人の二刀流で事業をする私たちは「給与所得」が発生すると個人事業主側の事業所得と合算して税金を計算する必要があります。

給与所得 = 給与収入(役員報酬) – 給与所得控除(55万円)

仮に役員報酬を98万円にした場合、給与所得が43万円、この金額が課税所得の対象になります。このため、厳密に役員報酬を「無税」にするには給与所得を0、つまり給与所得控除55万円以内に収める必要があります。

ここでようやく「役員報酬45,000円」が理解できます。役員報酬が月45,000円なら年間で54万円、給与所得控除55万円に収まり役員報酬に対しては税金がかかりません。

二刀流の無税の役員報酬は約45,000円

役員報酬を45,000円より増やしたい!

「無税」の役員報酬は約45,000円ということがわかりました。ただマイクロ法人といえど売上が安定しているしもっと役員報酬を出したい!という方もいると思います。そんな時にいくらに設定するといいのか見ていきましょう。

【東京都の社保の料金表】

この表を見ると、健康保険料の報酬月額は63,000円で等級が変わります。給与所得が発生するとして、それでも最安で社保に加入するならば63,000円未満が一つの目安になります。

これ以上に増やしたい!という方はお好きなように…なんですが、会社に利益を残すことで増える法人税、役員報酬を多く出すことによる保険料の増加、このバランスを鑑みて決めていきます。

役員報酬を45,000円以下でもいい?

続いて逆のパターン、売上が未定だし副業も初めてで45,000円も毎月利益が出そうにない…という方はもっと低い金額で役員報酬が設定できると嬉しいですよね。そこで最低の役員報酬の目安を見ていきましょう。

最低役員報酬金額の目安

社保に加入できる最低金額の役員報酬は12,000円程度です。

最安で社保に加入する時にかかる個人負担分の保険料の合計は上の表から10,906円です(2853.6 + 8052.00)。会社は役員報酬から社会保険料を天引きして振り込みます。役員報酬が社会保険料以下だとそもそも天引きできないので、天引きできる程度の金額にしておく必要があります。

色々不安だから一番低くしておきたい方は12,000円に設定しておくのがいいでしょう。

役員報酬は0にしちゃダメ

会社を作る前「役員報酬は0でもいい」というネット記事をみて、個人事業主で収入はあるからマイクロ法人の役員報酬は0にしてもいいかな、と考えました。だた残念ながら役員報酬を0にすると年金事務所から社保の加入を断られます。マイクロ法人は社保に加入して保険料を最適化するという目的なので社保に加入できなければ意味がありません。

役員報酬を決めた後にすること

社保加入時に役員報酬を記入

役員報酬によって社会保険料が決まるので、まずは社保の手続きから見ていきましょう。社保に加入する時は「被保険者資格届」を提出して社保に加入、保険証を受け取ります。この被保険者資格届に報酬月額(給料)を記載する欄があり、ここに記載された報酬月額を基に社保の標準報酬月額が決定します。

社保加入後1ヶ月後くらいに、このような標準報酬月額決定通知が郵送されます。

ここに自分の標準報酬月額が記載されています。

健保:058千円  厚年:088千円

私は「報酬月額45,000円」と記入していたのでそれぞれ最安等級の標準報酬月額です。

「被保険者資格届」は基本的にマイクロ法人設立後すぐ、会社謄本ができてすぐに新規適用届と一緒に提出する書類です。よくわからないまま報酬月額を適当な金額で書いてしまったりすると、意図せず高い(低い)等級の社保に加入することになってしまいます。こういったことがないように事前に勉強した上で、会社設立と社保加入は無料の会社設立サービスを利用してまとめて手続きしましょう。


役員報酬決定同意書の作成

役員報酬を決めたら同意書を作成して保存しておきます。役員報酬は原則会社設立から3ヶ月以内に決める必要があります。同意書には以下の事柄を記載します。

  • 決定した日付
  • 役員報酬決定(変更)対象者の氏名
  • 報酬決定額と開始時期
  • 出席者の署名捺印(代表者は会社印)

同意書は税務署に提出する必要はありませんが、税務調査などで税務署からの提示を求められた際には必要となる書類なので大切に保管しておく必要があります。私はこちらのサイトから雛形をダウンロードさせてもらい記入して保管しています。

役員報酬の変更

役員報酬を損金扱いできる定額同額給与(毎月同じ額の給与を支払う方法)にする場合、事業年度から3ヶ月以内に1度だけ役員報酬を変更できます。変更する場合も、役員報酬変更同意書を作成して保管しておきます。

役員報酬の振り込み

役員報酬は額面通り振り込むのではなく、税金や社会保険料を天引きして振り込みます。こちらの記事で詳しく解説しているので参考にしてみてくださいね。

【天引き後の金額がわかる!】マイクロ法人の役員報酬の支払い方
マイクロ法人を設立したばかりの方はどうやって役員報酬の天引き額を計算すればいいのか、迷っている方も多いのではないでしょうか?この記事では役員報酬からいくら天引きするのか、振り込みをするタイミング、振り込みした後の仕分け方法について詳しく解説します。

売上目標の決め方

売上 – 経費 – (控除) = 利益」です。マイクロ法人の目的は「社保の最適化」なので余計な税金はできる限り払いたくありません。利益がなければ法人税が最低金額になるため、経費と同じくらい売上があればいいということになります。

経費は事業内容によって様々ですが、マイクロ法人を維持するためにかかるほぼ全員共通の経費もあります。マイクロ法人の経営で最低でどのくらいの経費がかかるのか見ていきましょう。

マイクロ法人の経費

  • 会計ソフト:約4万円
  • 税理士費用:10万円~
  • 社会保険料(会社負担):13万円~
  • 役員報酬:14.4万円~
ランニングコストはいくら?マイクロ法人にかかる費用
社保の最適化をしたいのに、マイクロ法人を作って維持するのに高額な費用がかかるなら本末転倒ですよね。そこでマイクロ法人を設立・経営している私が実際に支払った法人設立費用、今支払っている法人のランニングコストをご紹介します。

税理士と顧問契約を結ぶかどうかなどで変わりますが、最低限このくらいの会社維持費がかかります。マイクロ法人の例でよくある、売上80万円、役員報酬45,000円で計算してみると

このようになります。

上の例だと赤字になりましたが、赤字であれば法人税は最低の約70,000円になります。余計な税金を一切支払わない完璧な「社保の最適化のためのマイクロ法人」のできあがりです。

役員報酬が45,000円以下であれば売上目標はもっと下がりますし、経費がもっとかかるようなら売上目標はさらに高くなります。自分のマイクロ法人に当てはめて「利益0付近でフィニッシュする」場合いくら売上が必要かを計算して売上目標を算出してみましょう。

赤字になってもいい?

とはいえ、実際こんなに計算通りに売上をコントロールできないのが現実です。まず、経費分の売上があがらないこともあるし、逆に事業が好調で利益が出過ぎてしまうこともあります。

利益が出過ぎてしまう場合、法人税は高くなりますが、それはそれでその事業を本業レベルに拡大させる、個人事業主の事業を縮小して法人一本化するみたいな別の未来も見えてきます。

売上が上がらない場合は単純に赤字になりますが、別に赤字でも問題ありません

  • 顧客からの会社の信用が下がる
  • 銀行からの会社の信用が下がる
  • 資金繰りができなくなる(キャッシュの枯渇)

このような問題はありますが、社保最適化が目的のマイクロ法人は銀行から融資を受けることは基本的にないですし、「実態は法人の個人」として副業をするようなケースが多いので会社が赤字かどうかが仕事の受注等にそこまで影響しないことが多いはずです。

資金繰りについても個人資産から賄うことができます。

  • 資本金を利用する
  • 役員借入金を利用する

個人のお金から入れた資本金・役員借入金を回していくことで、会社のキャッシュがなくなっても会社を維持できます。個人の負担分も加味して総合的に保険料がお得になっていればそこまで不安に感じなくても大丈夫です。

*売上がない場合のマイクロ法人の資金繰りについてはこちらの記事で詳しく解説しています

個人事業主との二刀流、マイクロ法人の売上がなくても大丈夫?
個人事業主とマイクロ法人の二刀流で大きな壁になるのがマイクロ法人で一定の売上をあげる必要があるということ。今回はマイクロ法人設立時に私が実際に行った売上がない場合のシミュレーションや役員報酬の決め方について詳しく解説していきます。

まとめ

この記事ではマイクロ法人の役員報酬・売上目標の決め方について解説しました。

ちなみに私は役員報酬は最低金額の12,000円に設定しました。副業経験もなく、安定した売上を出せる自信がなかったからです。個人事業主の事業が安定しているので、法人一年目は会社運営のノウハウを学びつつ、負担にならない程度に副業をして、という感じでのんびりやっています。

同じような状況の方なら12,000円の役員報酬で初めて見るのをおすすめします。マイクロ法人運営は難しいこともありますが、なんといっても数十万円単位で保険料が安くなるので思い切って踏み出す価値があります!

マイクロ法人は一人で、8万円程度で作れます。こちらの記事で1からわかりやすく解説しているので覗いてみてくださいね。

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以上、お読みいただきありがとうございました!

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