マイクロ法人では利益が出れば出るほど法人税が高くなります。マイクロ法人の目的は社会保険料の最適化。余計な費用は払わずに利益も最適化して法人税を抑えたいですよね。そのために活用したいのが法人の経費や控除。
私も個人事業主とマイクロ法人の二刀流で事業をしていますが、どんな経費を利用できるのか、個人事業でも事業をしている場合どうやって経費の切り分けをすればいいのか、税理士に相談したりしてある程度の最適解を見つけられました。
そこでこの記事では、マイクロ法人ならではの節税対策、経費の付け方についてご紹介します。
- マイクロ法人に使える経費
- 個人事業との経費の切り分け
- 売上が少ない時の経費の付け方
- 家事按分か、役員社宅かどっちがいい?
では始めましょう♪
役員社宅?出張手当?売上が少ないマイクロ法人の経費の付け方
マイクロ法人に使える経費
業務に関わる物品などの購入以外にも、法人だからこそ使える経費があります(経費にできることを損金算入・損金扱いなどとも言います)。ここでは経費扱いになる代表的なものをいくつか見ていきましょう。
役員社宅
役員社宅は法人名義で賃貸物件の契約をして、役員に貸し出すものです。役員は自宅や事務所としてその物件に住むことができます。役員社宅の場合は賃料の〜90%程度を法人が負担することになるので、法人が負担した分は全額損金算入できます。
個人事業主でも家事按分で家賃を経費にできますが、一般的に90%も按分できることはないので、法人ならではの優遇制度と言えますね。
出張手当て
一泊の出張に対して一律1万円を支給するなど、出張に伴う経費などを会社から社員に支給するものです。出張手当も全額損金算入できて法人税の節税にもなりますし、受け取る社員側も出張手当てには税金がかからないので節税効果バツグンの経費です。出張が多い業務の方は積極的に活用できます。
個人事業でも交通費は経費にできますが、法人の場合受け取る側(役員個人)のメリットがあるということがポイント。給料扱いにならないので出張手当てに対しては税金や保険料がかかりません。
経営セーフティ共済や生命保険
経営セーフティ共済は会社版の小規模企業共済のような制度です。掛け金全額が損金算入でき、会社の資金繰りが困難になった時に借入することもできます。また法人で生命保険に加入すると掛け金の一定割合を損金扱いにすることもできます。
個人事業でも小規模企業共済など利用できる制度はありますが、生命保険が経費扱いになることはありません。
マイクロ法人に使える経費は全部使うべき?
さて、個人事業では使えない法人ならではの経費についてみてきました。役員社宅や出張手当てなどかなりメリットのありそうな制度もあり、なんだかお得になりそうかも?といろいろ試してみたくなりますが…結論として「マイクロ法人」はこれらの経費は使わなくていいです。
そもそもマイクロ法人の目的は「社保の最適化」。個人事業と二刀流で事業を営み、マイクロ法人は副業だけでかなりミニマムにシンプルにして運営することが前提です。
- 個人事業で本業
- マイクロ法人で副業
【こんな会計が理想】
このようにマイクロ法人では最低等級の社保に加入して、無税の範囲で役員報酬を出すことが多く、売上は100万円以下などかなり少額です。いろいろ使える制度はありますが、そもそも売上が少なく利益もわずかなのであれば、経費を増やして節税する意味がありません。
もちろん赤字の繰越によって将来の売上の増加に備えることはできます。ただし、二刀流で事業をしている場合は法人の節税よりももっと真摯に取り組まなくてはいけないのは、売上が大きい個人事業の税金です。マイクロ法人で便利に使えそうな経費をうまく個人事業側につけて所得税・住民税を抑える工夫をしていきましょう。
売上が少ないマイクロ法人の経費の付け方
では具体的に二刀流の場合の経費の付け方について見ていきましょう。
家賃は個人契約で家事按分
マイクロ法人の役員社宅では最大約90%が損金扱いできるので、個人事業の家事按分と比較すると役員社宅のほうがメリットが大きいように思えます。家事按分の場合せいぜい50%程度が最大です。
ところが経費算入率は減っても家賃の一部を経費扱いにできることは節税効果がとても大きいので、売上の少ないマイクロ法人よりも個人事業側で家事按分を利用して個人の税金を減らすほうが賢明です。
家賃の家事按分の仕方はいくつかありますが、
- 使用時間で按分: ワンルームで1日10時間程度仕事している
- 使用面積で按分: 3部屋あるうち1室を事務所にしている
など、自分の場合を考えてより多く経費になりそうな方、かつ税務調査時にもちゃんと説明がつく方法で按分していきます。
ちなみにマイクロ法人でも個人事業の家事按分と同様に家賃を按分して経費にすることができます。法人名義の契約ではないので役員社宅にはなりませんが、個人事業と同じように使用時間や使用面積などを加味して家賃の数十%は経費にできます。
個人・法人どちらでも使えそうな経費は全部個人事業につける
家賃以外でも考え方は同じです。売上が多くで税金が多い個人事業側にうまく経費をつけていきます。二刀流の場合は別事業であっても、同じ家で同じ電子機器を使って仕事をしているなど、個人事業主とマイクロ法人で共有(共通)している出費が多いです。
例えば私の場合、個人でも法人でもIT事業を営んでいますが、
- 光熱費・通信費
- PCや電子機器
- サブスクなどの支払い手数料
- 事務用品
- 交通費
など、明確に個人か法人かを区別できない出費は結構あります。「個人でも法人でも使うな…」という経費の場合、売上が多い個人事業で経費になるように全て個人事業につけます。税理士確認したことですが、ここでパソコンを使うのは個人で80%、法人で20%だから経費も…などと経費を細かく分けずに全額個人事業につけて大丈夫です。
こういった経費を全部個人事業に持ってくることで節税効果はかなり高くなります。
分けられないもの、法人でしか使えないものもある
マイクロ法人の売上が少ないうちは、役員報酬や社会保険などの支払いだけで利益がほぼ0、または赤字になることもあります。そういった場合はありとあらゆる経費を個人事業につけたくなりますが、当たり前ですが税務調査が入ることもあるので「法人でしか使われないもの」はちゃんと法人につけるようにしましょう。
- 法人の会計ソフト
- 法人決算時の税理士費用
- 法人用の印鑑
- 法人事業のみで使う手数料(法人で運営しているWEBサイトのサーバー代など)
これはどう考えても法人でしかあり得ない、というものだけ法人の経費につけます。赤字になれば繰り越せばいいだけなので、分けるものはちゃんと分けて、会計処理をしていきましょう。
よくわからない経費制度に手を出さない
税金を減らすことに躍起になっていると制度内容をよく理解しないままにいろいろ加入して、あとあと思ったより使い勝手が悪かったり、最悪損をしたりします。
経営セーフティ共済や生命保険などがその一例です。
経営セーフティ共済は掛け金全額が損金算入できますが、解約時は40ヶ月未満だと元本割れしたり、受け取り時に税金がかかるなど思わぬ落とし穴もあります。そもそも1人法人のマイクロ法人には「倒産防止」や「借入」制度を利用する必要性もほとんどありません。
生命保険に関してはそもそも損金扱いにするために必要もないのに加入するのは本末転倒です。掛け金が100%戻る保証もないですし、手数料も高額なので二刀流のマイクロ法人であれば間違いなく不要です。
二刀流なら個人で使える制度を活用
二刀流で事業をしているなら、個人で使えるiDeCoや小規模企業共済を使うことで個人事業側での大きな節税になります。退職金が支給されるような会社員ではなくなったので将来老後資金への備えになるiDeCoや小規模企業共済は二刀流事業者にはピッタリな制度です。
こちらの記事でも解説しているので参考にしてみてくださいね。
まとめ
この記事では売上が少ないマイクロ法人の経費のつけ方についてご紹介しました。役員報酬や出張手当てはすごく魅力的な制度ですが、二刀流の場合、どちらが売上が多いのか、どちらが税金が高いのかを考えてなるべく個人事業に経費をつけるのが正解です。
経費をつけるために必要になるのは領収書と会計ソフト。領収書のもらい方、レシートで代用できる?などこちらの記事で詳しく解説しています。
会計ソフトの比較や税理相場についてはこちらの記事でも紹介しているので合わせてご覧ください。
ほかにもこのブログではマイクロ法人に関するノウハウをいろいろ紹介しているので、会社運営に迷ったら検索して記事を探してみてくださいね♪
以上、お読みいただきありがとうございました!
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